赤木和重『子育てのノロイをほぐしましょう―発達障害の子どもに学ぶ』(日本評論社、2021年刊)の紹介【転載】

2025年04月30日

戸田ゼミのテキストとして使用している、赤木和重『子育てのノロイをほぐしましょうー発達障害の子どもに学ぶ』をあるミニコミ誌に紹介したことがあったので、それを転載します。赤木先生は、科研や学会シンポ等でご一緒させていただく仲間です。

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 子育てには「正解はない」はずです。しかし、根拠があいまいで、世間の願望とでもいうべき「子育て、かくあるべし」というものが「正解」としてどこからともなく漂ってきて、子育てを縛り、息苦しいものに変えています。赤木さんによれば、この正体が「ノロイという見えないお化け」なのです。

 ノロイには、親や子ども自身にも、それが正しいと思わせてしまう悪い効果(ノロイの内面化)があり、「この言葉や考えはノロイだ」と自覚し、ゆっくりとほぐしていくことが必要だといいます。

 たとえば、「コトバのノロイ」では、子どもが「殺したい」と言えばおとなが「ダメ!」と制止し、「きらい」と言えば「ダメでしょ!」と注意してしまう「コトバを文字通りに受け取り、反応してしまうノロイ」が紹介されています。赤木さんは、子どもは語彙力が不足していたり、興奮したりして、自分の気持ちをそのまま言葉にできるわけではないとし、言葉の裏にある内面を見たり、言葉を一緒に探っていくかかわりが必要であると述べています。 

 また、「やればできる」のノロイは、「やってもできない」「頑張ってもできない」ことがたくさんあるにもかわらず、おとなが勝手に「やればできる」基準を設定し、そこに向けて子どもを頑張らせてしまう状況を指しています。そこで、おとなや他児から発せられる「なんでできないの?」という言葉は、「頑張っていない」「さぼっている」という否定的なまなざしとなり、それによって傷つく子どもがでてくるといいます。赤木さんは「できる―できない」以外のモノサシや、「できる―できない」の間にある子どもの気持ちを丁寧に見つめるモノサシを持てるかが大切だと述べます。

 本書を読み進めると「ノロわれている」自覚が芽生えてくるのでした。それは、「こうあるべき」というものに縛られていることへの気づきであり、他者から求められるより、自分自身が勝手に引き受けてきたもののようです。

 そんなのノロイを「なくす」のではなく、「ほぐす」ことができるならば、自分自身がもっと楽になり、他者との豊かな関係が築けるかもしれない。こんなことを気づかせてもらったのです。(トダ)

  

   (2023.5 全国障害者問題研究会北海道支部「会報」に掲載したもの)

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